【絶えず変化し“本物”であり続けること】
欧米のタトゥーシーンはリアリティショーやタトゥーセレブリティの登場によって、メインストリームとしての立ち位置を獲得している。タトゥーを入れていることはもはや特別なアティテュードではないと言えるだろう。
そこには様々なアーティストが存在し、中には良くも悪くもクライアントの要望に忠実で、誰かのスタイルを模倣することを厭わないアーティストもいる。そうしたコピーであってもとても精細に手が掛けられており、技術的には完璧と呼んでも差し支えない仕上がりのものもある。ただ“本物”ではないという最も大切な一点を除けば——。
Western tattooing has been taken in a very mainstream direction with the introduction of tattoo reality shows and tattoo artist celebrities. It is mainstream —every body has a tattoo and everyone has a story.
トライバルタトゥーの大家、TOMAS TOMAS氏は90年代——タトゥーがまだ日陰の存在で、インクを肌に刺し入れることが今日のように“クール”ではなかった時代だ——からの長いキャリアを持つ。多くのアーティストが他者や他文化の模倣に手を染めてしまう中にあって、氏はそのコピーカルチャーに巻き込まれることはけしてなかった。タトゥーに対する考えを絶えず良いベクトルで変遷させ続け、オリジナルであり続けたのだ。
和彫りが遠目に非常に際立っているのは、身体の広大な範囲を覆う、世界的に見ても特異なスタイルによる。これと同じことがTOMAS氏の描き出すトライバルやブラックワークにも言えるのだ。それは様々なシェイプの集合体だが、そのデザインの途方もないスケールが見る者を圧倒する。
また氏は長い年月の果てに自身の作品が薄くなったり歪んだりすることを承知しており、クライアントと一緒に歳を重ね、老体となってもなお美しく見えるデザインを実践している。
A beautiful Japanese full body tattoo, from a distance, has a very distinguishable style, but it is appreciated because of its vastness and placement on the body. The same goes for the blackwork/tribal tattooing Tomas mainly does. It may be triangles or other shapes, but from a distance, the vastness of the design is what takes the onlookers breathe away.
TOMAS氏は今、現代の日本のタトゥーシーンは90年代半ばから2000年代初頭にかけてのかつてのヨーロッパのそれに近しいと実感している。「未だアンダーグラウンドで秘密に包まれており、“ソウル”と“オーラ”を纏っている。しかし開かれたコミュニティがなくアーティストが孤立しているため、純粋に芸術的なレベルでの創造性の成長が阻害されているように感じる」と氏は話す。
逆を返せば、必要なのはコミュニティの形成であり、アーティストたちが互いの作品を見ることができる場だ。そして昨今、我が国のタトゥーシーンはそうした開かれた未来に向けて少しずつ動いている。秘密主義や個人主義は過去のものとなりつつあると言えるだろう。
Being in Japan, has been an eye opening experience for Tomas and his main reaction to the tattoo scene here is to compare it to the scene in Europe in the mid-90’s and early 2000s. “The scene here is still underground, still private and still holds its “soul” and “aura””, he continues, “but with the isolation of artists and the lack of an open community, creativity tends to be stunted on a purely artistic level.”
日本では欧米のようにタトゥーが完全に文化として受け入れられることはないかも知れない。けれどひと昔前と比べても、タトゥーのある人たちがオープンに生きやすくなっているのは事実だ。街を散策していても、新しいスタジオの看板に目が止まる機会が増えているように感じられる。
日本に移り住み、自らショップを持ち奮闘するTOMAS氏の姿勢は、間違いなく今後のタトゥーシーンのより良い展開の推進力となることだろう。洋の東西を問わず共通して言えるのは“本物”であることこそが勝利の鍵だということだ。氏のタトゥー哲学はこの考えに則しており、それゆえクライアントは常に唯一無二を手にすることができるのである。
Tattooing in Japan will probably never fully be embraced culturally like it has in the west, but it is slow edging towards a place where tattooed people are able to live openly and not afraid. Things are moving in a positive direction with more and more store front tattoo shops popping up all over Japan.
Black Moon Tattoo
住所: 埼玉県熊谷市石原2-23-2
営業時間: 11:00〜19:00(不定休)
電話: 080-8041-9865
Eメール: info@black-moon-tattoo.com
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