【全人類のストーリーを語るトライバル】
BLACK MOON TATTOOは埼玉県熊谷市に現れた気鋭のタトゥーショップだ。そこで腕を振るうのは、驚くなかれ、トライバルタトゥーの世界でレジェンドと称され、数知れぬアーティスト達に影響を与えてきたTOMAS TOMAS氏その人である。スタジオには燻るお香の薫りと耳に心地良いBGMが流れており、ヨーロッパの洗練された空気感と温もりが感じられる。氏は日本にしばらく腰を据えることを決め、関東のどこからでも比較的アクセスが容易で、かつ自然も多いこの地を選んだのだ。
Black Moon Tattoo is the newest tattoo shop in the Kanto tattoo scene located in Kumagaya, Saitama. As you enter the large multi-story building, the first thing you will notice is the aromatic herbal incense smoldering and the sounds of music playing in the background—a true western tattoo shop warmth. I was greeted by the owner Tomas Tomas at the door and the instant comfort we were struck with is different than any other tattoo shop I have experienced in Japan. Tomas is a legend in his field and has now decided to call Japan home. The studio is easily accessible from anywhere in the Kanto area.
TOMAS氏はフランスで生まれ、1990年代半ばにロンドンで本格的にタトゥーを生業としてキャリアをスタートさせた。氏のスタイルとテクニックの成り立ちは、当時のアーティスト達に付きものだったドラッグカルチャーやパーティーシーンと切り離しては語れない。氏は「シラフでいることがなかったから、真っ直ぐ綺麗なラインは引けなかった」ため、点描を駆使してデザインを彫り上げる技術を修得したと笑う。遠目にはフラットに塗りつぶされているように見えるが、近寄れば非常に細かいドットの集合によって描き上げられていることが分かるだろう。
あたかも粗削りなツールで彫られたかのようなその質感は、TOMAS氏の好む原始的な雰囲気を醸し出すが、デザインそのものにプリミティブな要素はまったく含まれていない。数多描き出してきたデザインはどれも“今”を表したものであり、氏を取り巻く現環境やクライアントから感じたバイブレーションを映し出した、他に類を見ないものだ。
クライアントとのカウンセリングを経て構築された紋様は直接、氏の手で肌に描かれていく。この行程はまるで儀式的とも表現できる厳かなもので、非常に長い時間を要する。脳裏に浮かんだデザインがクライアントの身体の流れに完璧にフィットするまで、氏は何度も何度も、繰り返しペンを走らせるのである。
Although the textured appearance takes on a primitive look and feel that Tomas likes, he also made it clear that there is nothing, at all, primitive about his designs. Each pattern and design is a representation of “the now”, a unique design, that comes from the vibrations he feels from his clients and the current situation in which he is working.
TOMAS氏は自身をトライバルタトゥーアーティストだと称するが、一般的に使われている意味での“トライブ=部族”とは一線を画しているのは明らかだ。世界に遍在する部族にはそれぞれにとって重要なストーリーを語る独特の紋様があるのは周知で、トライバルタトゥーと言えばこうした伝統的なパターンを示すことが多い。
しかしTOMAS氏が言うところの部族とは、どこか特定の一地域に暮らす人々を指すのではなく、この地球上に住む全人類を包括しているのだ。そのため氏のデザインには、あらゆる文化や生活様式の在り様が反映されている。今、氏は日本というこれまでとは異なる文化圏に暮らし豊かな自然と触れ合うことで、自らのデザインがどのように変わっていくのか心待ちにしているそうだ。
Tomas considers himself a tattooer of tribal designs but not tribal in the traditional sense it is commonly used. Regions and tribes have their particular styles that tell a story: one that is important to that lone tribe specifically.
He considers the “tribe” he tattoos for, to be made up of all humans living on this planet, and therefore his designs reflect all cultures and lived experiences. He expects his communing designs will morph naturally as he dives deeper into the Japanese way of life and the beauty of the nature readily available.
TOMAS氏のデザインは様々な要素を取り込み常に変化を続けているが、変わらないのはタトゥーへの情熱、そして献身、さらにはクライアントに最高の経験を提供しようと尽力する真摯な姿勢だ。先述した通り、氏はトライバルやブラックワークにおける第一人者であるが、人当たりはとても柔らかく、むしろ謙虚であるとさえ感じられる。常にクライアントの様子を窺い、痛みに耐えかねるようであれば休憩を挟み、あくまで受け手側に合わせた施術を旨としている様子だ。
氏はその身体に隈なくタトゥーを纏っているが、一度全身を完成させた後に、その上からもう一巡カバーアップの要領で覆い尽くしたのだと言うから驚かされる。TOMAS氏は単にタトゥーアーティストであるだけではなく、タトゥーという芸術に対する情熱を体現する存在でもあるのだ。
Although his designs are ever changing, what remains the same is his dedication to his craft and giving his clients the best tattoo and tattoo experience possible. As mentioned earlier, his tattoo studio is an authentic western shop where music plays, smoke flows and breaks are not just granted but asked for with out embarrassment. He knows his place in the zeitgeist of tattooing yet remains amazingly humble.
欧米ではタトゥーファンの間で知らぬ者のいないTOMAS氏であるが、極東の地、日本ではまだその存在が知られ始めたばかりだ。もちろんアンテナの鋭いフリーク達は既に氏のもとを訪ね、その身体に唯一無二のトライバルを刻んでもらっているが、ほぼ完全にアウェイな土地での再出発だと言えるだろう。しかし当のTOMAS氏はこの状況を楽しみ、新天地に心を沸き立たせている。
TOMAS氏はワンポイントからボディスーツまで、作品の大小に拘らない。これは新規のクライアントにとっては非常にありがたいことだろう。氏がヨーロッパから日本に移ってきたことは、我々にとって非常に幸運なことであり、今後の日本のタトゥーシーンに影響を与えることは必至だ。円熟の域に達していた氏のスタイルが、これまで経験してきたものとはまったく異なる和の文化と融け合い、どのように進化していくのか。それを間近で見られるのは僥倖という他ない。
Moving to Japan and having to restart has been a huge change for Tomas. He is a wildly popular and notable artist in the west, but is just starting to gain a similar following out here. Being in Japan is kind of a -starting again- in his career which he welcomes with open arms.
Black Moon Tattoo
住所: 埼玉県熊谷市石原2-23-2
営業時間: 11:00〜19:00(不定休)
電話: 080-8041-9865
Eメール: info@black-moon-tattoo.com
※完全予約制につき、まずは問い合わせを。
Address: 2-23-2 Ishihara, Kumagaya city, Saitama
Business hour: 11:00〜19:00(Irregular Holidays)
Phone: (+81)80-8041-9865
Email: info@black-moon-tattoo.com
※Appointment only.
HP: black-moon-tattoo.com
IG: www.instagram.com/tomastomas108